歯医者で行うボトックスと美容外科で行うボトックスの違い

ボトックス治療と聞くと、美容外科で行われるシワ取りや顔のリフトアップを思い浮かべる方が多いかもしれません。
しかし、歯科医院でもボトックス治療が行われていることをご存じでしょうか?本記事では、歯科医院でのボトックス治療と美容外科でのボトックス治療の違いについて詳しく解説します。

ボトックス治療とは?

ボトックスとは、ボツリヌス菌から生成された「ボツリヌストキシン」というタンパク質を利用した治療法です。
この物質は、神経と筋肉の間の信号伝達をブロックし、一時的に筋肉の収縮を抑える効果があります。その結果、シワの改善や筋肉の緊張緩和が期待できます。安全性が高く、適切な量を使用すれば副作用のリスクも低いとされています。

歯科医院で行うボトックスの特徴

歯科医院でのボトックス治療は、美容目的よりも機能改善を主眼とした治療が多いです。以下に具体的な治療内容とその目的を挙げます。

1. 歯ぎしりや食いしばりの緩和 多くの人が無意識に行っている歯ぎしりや食いしばりは、歯や顎関節に大きな負担をかけます。このような場合、咬筋(こうきん)という噛むときに使われる筋肉にボトックスを注射することで、筋肉の過剰な緊張を緩和します。これにより、以下のような効果が得られます: 顎関節症の症状軽減 歯の摩耗や破損の予防 頭痛や肩こりの軽減 2. 顎関節症の治療 顎関節症は、顎を動かす筋肉や関節に痛みや不調を引き起こす疾患です。咬筋や側頭筋にボトックスを注入することで、痛みを軽減し、スムーズな顎の動きを取り戻すことができます。 3. ガミースマイルの改善 笑ったときに歯茎が大きく露出する「ガミースマイル」は、多くの人が抱える審美的な悩みです。上唇を引き上げる筋肉にボトックスを注入することで、笑った際の歯茎の露出を抑え、自然な笑顔を作り出します。 4. フェイシャルペインの緩和 顔面の筋肉が原因で発生する痛み(フェイシャルペイン)にも、ボトックス治療が有効です。筋肉の緊張を和らげることで、痛みを軽減し、日常生活の質を向上させます。 美容外科で行うボトックスの特徴 一方、美容外科でのボトックス治療は、見た目の美しさを追求する目的が主です。以下に一般的な治療内容を挙げます。 1. シワの改善 美容外科でのボトックス治療の代表的な例が、表情ジワの改善です。額、眉間、目尻などに注射することで、筋肉の動きを抑え、シワを目立たなくします。特に年齢とともに深くなる表情ジワに効果的です。 2. 小顔効果 エラの張りが気になる場合、咬筋にボトックスを注射することで筋肉が縮小し、フェイスラインがスッキリとします。この治療は美容外科でも行われますが、歯科医院での咬筋ボトックスと似た施術と言えます。 3. リフトアップ効果 ボトックスを特定の筋肉に注入することで、顔全体のリフトアップを図ることができます。これにより、肌が引き締まり、若々しい印象を与えます。 4. 多汗症の治療 美容外科では、ワキや手のひら、足の裏などにボトックスを注射して、多汗症を改善する治療も行われています。この目的でのボトックスは歯科医院では行われない治療です。

歯科医院と美容外科の違い

1. 目的の違い 歯科医院でのボトックス治療は、噛む機能の改善や筋肉の緊張を和らげることで症状を緩和することが主な目的です。一方、美容外科での治療は、見た目を美しく整えることを目的としています。 2. 施術部位の違い 歯科医院では、主に咬筋や側頭筋といった口腔周囲の筋肉がターゲットになります。美容外科では、顔全体や体の他の部位(ワキや手のひらなど)が対象です。 3. アプローチの違い 歯科医師は口腔や顎の構造に精通しているため、噛み合わせや顎関節の動きを考慮した治療を行います。一方、美容外科医は顔全体のバランスや美的感覚を重視して施術を行います。 4. 保険適用の有無 歯科医院で行うボトックス治療の一部(例えば顎関節症の治療)は、医療保険が適用される場合があります。一方、美容外科でのボトックス治療は基本的に自由診療となり、全額自己負担となります。

まとめ

歯科医院でのボトックス治療と美容外科でのボトックス治療は、それぞれ目的や対象部位が異なります。歯科医院では、噛み合わせや顎の健康を重視した治療が行われ、美容外科では見た目の美しさを追求する施術が中心です。どちらの治療を選ぶべきかは、患者さん自身のニーズや症状によって異なります。気になる症状やお悩みがある方は、まずは専門医に相談してみることをお勧めします。
ボトックス治療は適切に行えば、症状の改善や美しい見た目を得るための強力なツールとなります。正しい知識を持ち、自分に合った治療法を選びましょう。